桃太郎(ももたろう)   文:カトウヒロ吉  絵:都あきこ

桃太郎(ももたろう) 文:カトウヒロ吉 絵:都あきこ

むかしむかし、あるところに、
おじいさんと おばあさんが すんでいました。

あるひの こと。
おじいさんは やまへ しばかりに、
おばあさんは かわへ せんたくに いきました。

おばあさんが かわで じゃぶじゃぶ せんたくして いると、
どんぶらこ どんぶらこと、
おおきな おおきな ももが、ながれて きました。

「なんて おいしそうな ももでしょう!」

おばあさんは ももを ひろって かえって、
おじいさんと いっしょに たべることに しました。

おばあさんが ももを きろうと すると、
ひとりでに ももが ぱかんと われて、
げんきな おとこの こが とびだしてきました。

「ももから こどもが うまれましたよ!」
「こりゃあ、おどろいた!」

おじいさんと おばあさんは、おおよろこび。
このこに ももたろうと なまえを つけて、
たいへん かわいがりました。

ももたろうは、
むしゃむしゃ ぱくぱく、
なんでも たくさん たべました。
たべた ぶんだけ ずんずん おおきくなり、
すごい ちからもちに そだって いきました。

そのころ むらでは、
おそろしい おにたちが やってきて、
わるい こと ばかり していました。

おにたちは いえを こわして、
たべものや だいじなたからを ぬすんで いって しまいます。
ももたろうは、
むらの ひとたちが こまって いるのを
だまって みて いる ことが できませんでした。

「よし、おにたいじに いくぞ!」

おばあさんは にっぽんいちの きびだんごを
たくさん つくってくれました。
おじいさんは にっぽんいちの ももたろうと かいた はたを
つくってくれました。

ももたろうは、きびだんごを こしに つけて
いさましく いえを でました。

ももたろうが、げんきいっぱい あるいていると、
いぬが やって きて、いいました。
「ももたろうさん、
 どこへ いくのですか。わんわん。」
「おにがしまに おにたいじ。」
「おこしに つけているのは なんですか。わんわん。」
「にっぽんいちの きびだんご。」
「ひとつ くださいな。そしたら けらいに なりましょう。わんわん。」
「じゃあ、ひとつ あげよう。」

いぬは、きびだんごを むしゃむしゃ たべると、
けらいに なりました。

しばらく いくと、こんどは さるが やって きて いいました。
「ももたろうさん、
 どこへ いくのですか。きゃっきゃっ。」
「おにがしまに おにたいじ。」
「おこしに つけているのは なんですか。きゃっきゃっ。」
「にっぽんいちの きびだんご。」
「ひとつ くださいな。
 そしたら けらいに なりましょう。きゃっきゃっ。」
「じゃあ、ひとつ あげよう。」

さるは、きびだんごを むしゃむしゃ たべると、
けらいに なりました。

つづいて、きじも やって きました。
「ももたろうさん、
 どこへ いくのですか。けんけーん。」
「おにがしまに おにたいじ。」
「おこしに つけているのは なんですか。けんけーん。」
「にっぽんいちの きびだんご。」
「ひとつ くださいな。そしたら けらいに なりましょう。けんけーん。」
「じゃあ、ひとつ あげよう。」

きじは、きびだんごを むしゃむしゃ たべると、
けらいに なりました。

こうして、ももたろうには、
いぬ さる きじの おともが できました。

うみべに ついた、
ももたろうと さんびきの けらいたち。
ふねに のりこみ、おにがしまを めざします。

えんやーとっと、えんやーとっと。
ももたろうたちは 
力を あわせて ふねを こぎました。

「みえてきたぞ。おにがしまだ!」

まずは、きじが そらから ようすを みようと とびたちました。
「ももたろうさん、
 おにどもは さかもりの まっさいちゅうです。
 みんな よっぱらっています!けんけーん。」

おにがしまに ついた ももたろうは、
「やいやい、わるい おにどもめ。
 この ももたろうが せいばつに きたぞ!」
と おおきな こえで さけびました。

さるが するするっと へいを よじのぼって、
なかから もんを あけました。

とつぜん あらわれた ももたろうに、
おにどもは おおあわて。

あっけに とられている おにどもを
ももたろうは つぎからつぎへと なげとばします。

さんびきの けらいも、だいかつやく。
いぬは おにの あしに かみつき、
さるは おにの かおを ひっかき、
きじは おにの めだまを つっつきます。

ももたろうたちは、
おにどもを かたっぱしから やっつけてしまいました。

「ええい、なまいきな やつらめ。おれさまが あいてだ!」
さいごに、おおきな おにの おやぶんが、
かなぼうを ぶんぶん ふりまわしながら あらわれました。

おにの おやぶんは、
ももたろうの あたま めがけて、
かなぼうを ふりおろします。
「ももたろうさん、あぶない!
 わん、きゃっ、けーん!」

ももたろうは かなぼうを さっと かわして、
おにの おやぶんを なげとばして しまいました。

さすがの おにの おやぶんも こうさんです。
「どうか おゆるしください。
 ぬすんだ たからは、ぜんぶ おかえしします。」
「よし。にどと わるい ことは するなよ。」

ももたろうたちは、
とりもどした たからを ふねに つみこみ、
うちへ かえっていきました。

おじいさんと おばあさんは、
げんきに かえってきた ももたろうを みて
おおよろこび。

それからは おにどもも こなくなり、
ももたろうは、
おじいさんと おばあさんと さんにんで、
いつまでも しあわせに くらしました。

めでたし めでたし。

おしまい

桃太郎(ももたろう) 文:カトウヒロ吉 絵:都あきこ


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